俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
新婚ランウェイチェンジ

 天澤さんと初めて食事した日の二日後、私はお昼休憩のときにいつもの社食ではなく、オフィスビルの外にあるカフェに行こうと美紅さんを誘った。

 ここのほうが航空関係者がいても少数だろうから、なんとなく目的のものを出しやすい。美紅さんにも印鑑を持ってきてもらったし、準備はオッケー。

 奥まった席についてランチを頼み、周りを見渡してから、私はバッグの中から一枚の紙切れとペンを取り出した。やや緊張気味にそれを差し出す。


「美紅さん、折り入って頼みがあるんですが、この書類にサインしていただけませんか?」
「なによ、印鑑まで持ってこさせて。まさか変な契約させるつもりじゃ……」


 美紅さんは怪訝そうに用紙を見下ろした瞬間、大きな目をさらに大きくしてあんぐりと口を開けた。


「こっ──!?」
「静かに! 静かにお願いします!」


 のけ反って叫び出しそうな彼女を、私は慌てて前のめりになり手で制した。

 驚くのも無理はない。今私が差し出したのは婚姻届であり、〝天澤千里〟と〝蒼麻つぐみ〟の名前が記入されているのだから。

 昨日、休みだった天澤さんが届を用意してくれて、あとは証人の欄を埋めるだけ。彼はすでに泉さんからサインをもらっていて、私は美紅さんにお願いしようとしているのだ。
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