BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
目頭がじわっと熱くなる。
滲む涙に気づかれないように俯いた。
ほらね、こういうとき、前髪が長いと助かるんだもん……。
「へえ。そんで?」
「もちろん無理だって言いましたよー、絹くんが。KINGを指名するとかワガママすぎだし、大した度胸ですよね」
ううう開吏くん。お願いだから傷口をえぐらないでほしい。
恥ずかしいよ、消えたい埋まりたい……っ。
雷の中だって構わない。
この部屋を飛び出そうかと本気で思ったときだった。
「あやる」
背後から千広くんの声が飛んでくる。
びくっとした。
いったいどんな辛辣な言葉を浴びせられるんだろうと。
だけど、続いて聞こえてきたのは
「俺の部屋来るか?」
予想よりもずっと優しい声だった。
周りが息を呑む気配がして、わたしは───その場から張り付いたみたいに動けない。
千広くんは面倒くさがるでもなく、静かに近づいてくると、わたしの肩をそっと抱いて。
「お前昔から神経太いよな」
小さく笑いながら、耳元で囁いた。