BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
服の裾からそっと手を離す。
反応を見るのが怖いから俯いて返事を待っていると、千広くんがわたしに向き直る気配がした。
「俺を使えば、昨日みたく誰にも手出されずに済むと思ったんだろ」
「え?」
「お前って賢いな」
なんと返すのが正解か、瞬時に頭が回らない。
千広くんは、わたしが自分の身を守るために千広くんを利用したと思ってるの……?
事実助かっているわけだから、結果として間違いではないのだけど、
わたしが千広くんの名前を出したのは、QUEENの使命から逃れようとしたからじゃなくて。
──初めては、大事にしたかったから、なのに。