BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
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ほのかなムスク。千広くんの匂いだ……。

──と、眠りから覚めたのが10秒ほど前。


どこだろう、このふかふかな場所は……。

あまい気だるさが全身を支配していて、しばらくするとまた瞼が重たくなってくる。


うぅ〜…まあいいや。
心地いいからこのまま寝ちゃおう……。

ごろんと寝返りを打った直後、となりに横たわる千広くんの姿を捉えた。



「……っ!」

目と鼻の先に千広くんが、いる。
ぼんやりしていた意識もすぐに覚醒する。


そうだ、千広くん、アノ薬を飲んじゃって……。

あのもどかしい苦しさを知ってるから、わたしがなんとか楽にさせてあげなきゃって思ったのに。

──いっぱい甘いこと、されて……最終的に「もっと」って、求めてしまったのはわたしのほう……。
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