BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-

うそ、起きてたの。
触れてしまった以上、もうあとにも引けず。


「………」


苦しいけど、眠ったまま無意識に抱きついてしまった!という設定で押し通そう。そうしよう。


自然に自然にと思うのに、どんどん脈が早まるせいで余計に焦ってしまって……抱きしめる手にヘンな力が入ってしまった。


こんなんで寝たふりを突き通せるのかな。……なんてハラハラしていれば、何を思ったのか、千広くんが体をぐっと寄せてくるから。



「……っ!?」

驚きのあまり声が出そうになるし、突き飛ばしそうになる。

そうだ。
きっと千広くんこそ夢の中に違いない。


だとしたらさっきのセリフは?

たしかにわたしの名前を呼んでた。
“誰と間違えてるんだ……”って。


魔は差したけど、間違えたわけじゃない。

相手が千広くんだから──好きな人だから、くっつきたくて……。
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