BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
「千広君と安斉サンは、中学の頃同じクラスだった。そのときに深い仲だった……もしくは、千広君が安斉さんを好きだったと、仮定してみたけどさ」
その時点でありえねーんだよ、と絹君がソファから脚を投げ出した。
「あの千広君だぜ? 松葉に育てられた人間は感情では動かない。絶対に、だ。親しくするとき、優しくするとき、ぜーんぶ何か裏の目的がある」
うん。絹君の言うことは間違ってない。
細かいことを言えば、感情で動かないわけじゃなく、自己の感情を持てないように育てられる。
───松葉という名が、この街の絶対的支配者であり続ける理由はこれ。
支配者は支配者によってつくられる。
「そうだね。千広君に愛だの恋だの、そんな感情があるはずがない──持てるはずがない」