BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-

「──なあんて、ほんとにそう思ってんの?冽君」



にやりと笑った絹君が肩を組んできたのは、開吏が出ていった直後だった。

わざわざ席を立って、僕の隣に座って。

煽るようにそんなことを言う。


黒百合が彫られた腕を、やんわりどけた。



「はあ〜?なにが言いたいの絹君」


首を傾げれば、絹君はさらに顔をのぞきこんでくる。

柔らかなそうな紫の髪がふわりと揺れた。



「なあ、気づいてたか? 安斉サンのリボンの留具。あのブラックダイヤ、“ホンモノ”のほうだぜ」


──ドクリ。

心臓が確かな音を立てて跳ねた。



「………、うそでしょ?」


QUEENには、胸元で美しく光るブラックダイヤの留具が与えられる。

……という伝統も、ここ数年は見せかけだけ。


月1で変わるようなたかがQUEENに、本物なんて身に付けさせるわけがなかった。

今までのQUEEN達は偽物とも知らず、恍惚としてそれを見つめていたけれど。



「開吏を落ち着かせるために、さっきはそれっぽく話作って合わせてやったけど。これ聞いて、冽君はどう思う?」
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