BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-

暗闇で小さく笑う気配がした。


「友だちより睡眠優先するやついるのか」


どうせ数分しか変わらねえだろって。そんな声を聞きながら、また、だんだん思い出してくる。

冷血だとか言われているけれど、そう、千広くんは案外よく笑う人だった。


わざわざ繋がなくても逃げないって言ったのに、まだ手のひらには体温がある。



「千広くん」

「なんだ」

「ほんとに、もう逃げないよ。……逃げないです」

「…………」


掴む力がわずかに緩んだのがわかった。

判断を迷っているみたい。

触れる面積が少しずつ減っていく。
そうして、指先だけかろうじて繋がっている状態になって。


あ……離れ、そう。

そう思った瞬間。


「でも、不安なら繋いだままでいーよ、」


とっさに握り返してしまったのは、どうしてだろう。
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