BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
案内された部屋の奥に見えるのは、たしかにベッドである。
1人どころか、4,5人は並んで寝られるような大きな大きなベッドである。
だけど。
「ここ、千広くんの部屋じゃ……」
わたしはここに来たことがある。
とういうか先週もここで千広くんと一緒に……。
「そう。今までのQUEENもどきは、誰ひとりとして入ったことがないKINGの部屋」
「……えっと、どうしてここ、に」
「安斉サンてさ、QUEENになってから一回も家に帰ってないよな」
「、へ」
嚙み合わない会話に首をかしげると同時に、自分の表情がひきつるのがわかった。
「おれたちから逃れるために、授業に出たいとは言うのに、帰りたいとは言わなかったし」
「っ!」
「帰りたくねーの? 家にいんのはBLACKにいるよりも苦痛?」
ひゅ、と息をのむ。
帰る場所はある。帝区のアパートの一室。
わたし以外誰も帰ってくることはない、がらんとした空虚な部屋。
「――悪い。そんな表情させようと思って言ったわけじゃねーよ。詮索する意図もない。ただ……」
そう零した絹くんが、そっと瞼を伏せた。
「安斉サンも、おれたちと同じなんかなー……と」