BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
隣に立つ千広くんの裾を、ちょんちょんと引っ張った。
「千広くん。わたし今からでも返品どうぞ」
瞬きと同時、千広くんの視線がわたしに切り替わる。
だけど、先に口を開いたのは黒髪ヘアバンドの男の子だった。
「うわ、なに馴れ馴れしく“千広くん”とか呼んでんのこの女⁉ 身の程わきまえろよ」
「っえ?……あ」
そっか。今の千広くんはBLACK KINGDOMのトップ。
一般生徒はおろか、BLACKのメンバーですらまともに近づくことが許されていないと、風の噂で聞いたことがあった。
さすがに焦りを感じて、ごめんなさいと、頭を下げようとした。……のに。
「いーんだよ。あやるならいい」
千広くんが、面倒くさそうにそんなことを言う。