BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-

「えっとね、学校の非常階段の、下……」



千広くんと隣の席になったのは、ちょうど、わたしの家庭環境が壊れ始めた頃だった。


学校から帰ると、家に若い女の人がいることが増えた。

初めはその人もわたしに遠慮する素振りを見せていたけれど、いつの間にか家にいることが当たり前のようになっていて。


しばらくすると、今度はわたしが邪魔者のような扱いを受けるようになった。



お父さんはわたしに申し訳なさそうな顔をしながらも何も言わず。

その女の人が家にいないときは、お父さんも帰ってこなかった。


学校から帰ると、ひとりきり、もしくは、お父さんとあの女の人と3人。



「家に帰るのが嫌で、放課後よくそこで時間潰してたんだよね」

「そんなヘンな場所で……」

「うん。踊り場だとたまに生徒が通ったりして見つかっちゃうけど、下の隙間だと滅多に見つかることないんだ〜」



忘れていた記憶も、いざ思い出してみれば鮮やかに蘇ってくる。

懐かしいなあ……。

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