BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-

「でも千広様には見つかっちゃったわけだ!」

「そう。だから“滅多に”なの。最初は“絶対”見つからないと思ってたけど、千広くんに見つかっちゃったから」


へへ、と自分の口から無意識に笑い声がもれた。

恥ずかしくて、おにぎりをほお張って誤魔化す。




──『お前なにやってんの』


千広くん見つかったとき、わたしはポテチの袋を持っていて、それにちょうど手を伸ばしていたところだった。


非常階段の下でひとり、隠れてポテチを食べる女として認識されたことが、とにかく恥ずかしくて、しばし固まっていた。


加えて、相手はあの松葉千広くん。


───噂はかねがね、帝区を牛耳る名家・松葉家のご令息である。

< 259 / 309 >

この作品をシェア

pagetop