BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
「あ、はい。お名前だけは存じてました」
「え〜知っててくれたんだ。うれしーな」
にこっと笑うたびに、柔らかそうなミルクブラウンの髪がふわふわ揺れる。
無邪気な仔犬を思い出させる八重歯が特徴的。
今屋敷 冽くん。
幹部の中ではずば抜けて明るい雰囲気を放っている。
ちゃらいとも言えるけれど、良い方に捉えれば、親しみやすそう。
不穏な空気が渦巻いている黒帝の中では、いい意味で浮いているんじゃないかと思った。
「それで、あっちの凶暴なのが、伊織 絹」
冽くんが指をさした方へ視線を移す。
紫のウルフヘアー、耳元や指にアクセサリーがたくさん目立っている。
冽くんの首根っこを掴んで、引き剥がしていた人だ。
「どぉも」
「は、はい、どうも」
ぎこちなくお辞儀を返せば、どうしてかふっと笑われた。