BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
「肝が据わってそ~な女。えーっと、名前なんだっけ? 安斉……」
「あやるです」
「アヤル? ヘンな名前だなー」
「はあ、どうも」
「ハハ、なんだよどうもって。嘘だよカワイーじゃん。千広君も言ってたぜ」
その名前に反応する。
千広くん、が?
カワイイなんて、言うはずないけど……。
部屋に入ってからは、ずっと目を合わせられないままだったのに、今度は勝手に体が動いた。
振り向くと、黒い瞳とぶつかる。
どくん、と音がした。
まさか、千広くんもわたしを見ているとは、思わなかったから……。
どくん、どくん。
目が合っている時間は、永遠にも思え──。
「……名前のハナシだろ」
そんな言葉と同時、ふいっと視線が逸らされる。