BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-

じわりと滲んでくる涙は、飲まされたモノのせいなのか、生理的なものなのか、羞恥からなのか。

それとも……。



「………千広くん、」


どうしてここで名前を呼んでしまったのか。

こうなることがわかっていて、わたしをここに連れてきた張本人なのに。


「千広君がいーの? あはは、むりだよ。千広君がQUEEN “ごとき”に手を出すなんて絶対あり得ない。身の程をわきまえようね?」


そう、だった。

千広くんは特別な存在。

中学のときみたいに、隣に座って会話をするなんて、今は誰が望んでも叶わないくらい、遠い人。


忘れなきゃ。いつまでも、思い出を引きずったりしないで……。

抵抗できない代わりに、そっと目を閉じた。


そんなとき


「冽」


響いたのは千広くんの声。



「今夜はやめとけ」

「……どうしたの、千広君、急に」

「そいつ処女なんだよ」

「………うん?」


……、……え?

ぽかんと固まるしかない。


「だから、男の経験ねーの、あやるは」


と、あくまで冷静な声が繰り返す。


「るーちゃん、嘘でしょ? 何年も黒帝にいて、そんなこと……」

「いーからお前たちもう帰れ。この女、今日は俺が預かるから」

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