BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
──松葉千広くんの、言うことは絶対、なのだ。
特別通る声をしているわけでもないし、今だって、ただぼそっと呟いたくらいの音量でしかなく。
それなのに、冽くんも絹くんも、条件反射のごとく、一瞬でわたしから身を引いた。
「千広君、まさか。るーちゃんをこの状態で放置しようなんて考えてないよね?」
「……だったら?」
「そうだとしたら……かなり酷かなあと。さっきも言ったけど、僕、今日はいつもより強めに調合したんだよね。体が火照るだけじゃ済まないよ」
「……面倒くせえことしやがる」
不機嫌を顕にした千広くんは、視線を扉の方へゆっくりと移し、無言のまま顎で促した。
“ 出ていけ ”と。
すると10秒も経たないうちに皆の足音は遠ざかり、千広くんとわたし、ふたりきりになってしまう。
時間の経過とともに肌は火照る一方。視界もぐらぐら揺れ始めた。