BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-
「我慢しろ。奥の部屋には水がある。飲んだら少しはマシになるだろ」
千広くんの言うことは絶対、だから。
抵抗なんてしない。わかったと頷いて身を委ねる。
千広くんに抱えられてゆらゆら、ゆらゆら。
次第に、これはひょっとしたら夢の中なんじゃないかと思い始めた。
中学を卒業して以来、会話を交わすことすらなかった千広くんが今、すぐ近くにいること。
手の届かない存在のはずなのに、こんな簡単に近づくことができるなんておかしい。
夢だとしたら辻褄も合う。
今月のQUEENに、わたしみたいな平凡すぎる女が選ばれることも、夢の中だったらあり得るかもしれない。
夢の中だったら──千広くんが……“あのこと”を知っていても、おかしくないのだ。