違いませんが、 違います‼︎
第0章
田舎という程田舎ではなく、都会という程都会ではない中途半端な街は、全てが中途半端だ。
近所付き合いも中途半端。
あまり立ち入らないようにしましょう
という空気はあるが、何か有ればすぐに近所中に知れ渡っている。
だからといって、村八分にされるわけではなく、ただいないところで悪口を言われる。
ただそれだけ。
そのコミュニティにしがみつくも、立ち入らないも自由だ。
私はそのコミュニティが合わない。ほっといてほしい。
でも、母は違った。そこにいる事こそが全てなのだろう。
中途半端な男尊女卑文化。
女の私が産まれた時は、それなりに可愛がってくれていた。
でも、弟の一(ハジメ)が産まれて、私は主役の座を奪われた。
その時から、急激に私の写真がなくなっている事がそれを物語っている。
大人になれば、祖父祖母からのプレッシャーがあったのだと理解できる。
長男信仰がまだ残っているこの街で、母はようやく認められたのだ。
一には申し訳ないが、顔も頭も平均以下の私は、無駄なプレッシャーを受けなくて済んだ。
愛されていないわけではない。
成績が悪くても怒られなかった。部活も進路も「無理はしたくない」と言えば「それがいい」と認めてくれた。
大学に行ける頭もなかったので、就職したいといえば「それがいい」。
職場の近くに住みたいといえば「それがいい」。
初の職場がブラックで辞めたいというば「それがいい」。
とりあえずバイトするので帰らないといえば「それがいい」
そう言ってくれる。
実家に帰れば歓迎してくれるし、時々母が遊びに来て一緒に買い物をしてひたすら母の愚痴を話してくれる。
私にはそれがちょうどよかった。
学生時代は、社会に出たらそんな煩わしい人間関係がなくなると思っていた。
だが、学生時代よりも社会に出た方が煩わしい。そして、残酷だ。
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