違いませんが、 違います‼︎
「うまっ」
葉山さんが頼んだおつまみに箸を伸ばす。
「これは日本酒ですね」
そう呟けば、店員さんを呼び止める。
「彼女に日本酒を」
何!この人!
なんてスマートなんでしょう!
逆に怖いんですけど!
緩和してからの急落下とかやめて下さい!
メニューを受け取り、比較的お手軽な価格の日本酒をチョイスする。
「もっといい日本酒を飲んでも構いませんよ」
「いい日本酒とはなんですか?」
葉山さんの言い方にむっとして、つい言い返してしまった。
「値段ではありません。今、並んでいると料理との相性を考えてこのお酒を選びました」
フォローを入れるが、葉山さんはキョトンとした顔をしている。
理解してませんね。
では
値が張る日本酒は、それだけ手が込んでいるという事です。
米を作る人の手、日本酒を造る人の手が掛かっているという事です。
今、ここに並んでいるものは味が強い物が多いので、繊細な味わいのお酒では負けてしまうのです。
だから、料理を邪魔をしない日本酒を選んだだけです。値段ではありません。
思いの丈を一気に言う。
思った以上に声が出ていたのか店の中が静かになった。