違いませんが、 違います‼︎


翌朝、爽やかな葉山さんに起こされる。
私の部屋にいる葉山さん。
違和感しかない。

「朝ごはんできてますよ」

家族揃って「いただきます」

なんだこの光景は。
普通だ。日常だ。怖い、怖すぎる。

「このお味噌美味しいですね、どこのですか?」

とか普通に会話してるし、昨日の緊張感やしんみりさの微塵もない。

私の実家なのだが、疎外感が半端ない。
勝手に話が進んでいる。

新居?引っ越し?
聞いてません。
これにサインをしろ?
これって婚姻届ではないですか!

しかも、証人の欄まで記入済みってなんなんですか!

ニコニコと嬉しそうに微笑む両親達を見ていると、拒否する事も出来ない。


判子がないので、一旦持ち帰ります。

と提案すると、そっと母が判子を差し出す。

とりあえずサインをして、この場を収めよう。出さなければいいんだ、出さなければ。



なんとかこの場を収めよう帰宅する。

「そこに座って下さい」

真剣な顔で言っても、

「お母さんから頂いた一夜漬けがもう少しで焼けるから、食べながらにしよう」

と抜かす。

不服顔をしても

「まぁまぁ。とりあえず温かいうちに食べましょう」

とか言いながら食べ始める。
いい匂いに釣られて完食してしまった。

これは絶対に流されてはいけない。

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