違いませんが、 違います‼︎


「ありがとう」

ダンディーなおじ様に、熱い握手をされた。

「婚姻の無効も破棄も認めないからね」

ダメだよ

念を押される。

え?

頭の上にはてなマークが出る。

大層な家柄も、強靭なコネもなく、見た目も下に分類する人間を嫁に認めるわけにはいかん!

という話ではなく?

「本当にもう無理って思ったら、いつでも僕に言ってね。慰謝料いっぱいもらえるように頑張るから‼︎」

両手を握りながら、真面目な顔で言う。

どう返して良いものか悩んでいると、強く引っ張られた。

見上げると葉山さんがいた。

「何余計なことを言ってるんですか?」

あと、気安く触らないで下さい。

不穏な空気を漂わせる葉山さん。
何も言わないのが正解だったようです。

「まぁ、仲が良い事」

葉山さんの後ろに上品な奥様がいらっしゃいます。
きっと葉山さんのお母様でしょう。

「嫌ですよ。ここ年になってセクハラ弁護士の妻だなんて、見っともない」

お母様、可愛い顔してなかなか言いますね。
周囲を気にするなタイプですか?
葉山さんと釣り合わない私を認めないとか言われてしまうのでしょうか?

私の中で緊張が走ります。

「言われるなら、悪徳弁護士の妻とか銭ゲバの妻とかが良いわ」

フフフと持っているはずのない扇子が見えるのは気のせいでしょうか?

葉山さんを見れば、

「それはいいですねぇ」

と同じ空気を纏っています。

小さく怯えるお父様。
なんだか仲良く出来そうな気がします。



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