違いませんが、 違います‼︎
言われた場所に着き、目の前に立つ聳えるビルを眺める。
「言われた場所に着きましたが」
「すぐに行くから待ってて」
周りは、スーツに身を包んだビジネスマンと見るからに出来る選ばれた女性たち。
明らかに場違いだ。
今から服を買いに行くべきか?
だが、そんなお金持っていない。
この場にあった服なんて買ったら、破産だ。
もっと顔が良かったら、体つきが良かったら、それを使ってお金が稼げるのに。
斉藤さんを待ちながら
そんな事を考えても仕方がない。
と自分を慰める。虚しい。
「坂本さんですか?」
声をかけられた振り向くと、綺麗な女性が立っていた。パンツに白シャツ、パンプス。
仕事の出来るかっこいい女性。住む世界が違う人だ。
「斉藤の代わりに参りました」
では行きましょう。と促される。
ここまで来たら、逃げると言う選択肢はない。なんの用事かだけでも聞かないと斉藤さんにも大将にも顔向けが出来ない。
一歩を踏み出さないと
「私 三枝と言います。よろしくね」
「坂本 千枝です」
「斉藤部長とはどういう関係?」
千枝ちゃんね。とニコッと笑ってから、真顔で聞く三枝さん。
グイグイ来ますね。ここで嘘を言っても、仕方がないので「働いていた店の常連さんです」と答える。
斉藤さんのメンツの為にも、私の為にも、普通の居酒屋ですけどと付け足しておく。