また、君に会えるまで。

「…茉冬…。」


お兄ちゃんに名前を呼ばれても、返事をする気力がなかった。


医者の言葉を聞いたあとの記憶はほとんどない。


ただ、咲夜の顔は、恐ろしい程に綺麗で、まだ生きているんじゃないかと思ったことは覚えてる。


咲夜は死んでなんかない。


そう思いたくて、必死に自分に言い聞かせるけど、悲しそうなお兄ちゃんの顔と、


廊下まで聞こえてくる琴也くんの泣き声がそれを許さない。


「茉冬…家に…帰ろう…?」


お兄ちゃんは私に目線を合わせて震える声で言った。


私は力なく頷いた。


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