ANOTHER WIND~もう一人の主人公~
麓までは歩いて10分とかからなかった。
下山途中に垣間見えた景色は、やはり信じられるものではなかった。
田んぼ…田んぼ…田んぼ…田んぼ…
昔にタイムスリップしてしまったかと思わせる光景。
――じゃなくて、タイムスリップしてるんだって。

「お父ちゃー…ん!!」
「おぉ、帰ったか娘よ!」
「父ちゃん、客人を連れてきたよ!」
先の少女が話しかけていたのは40後半から50くらいの、若めで初老の男性であった。
これまたなんとも貧相な服を着ている。
――いや、これが普通なのか?

「客人って…また変わった人を連れてきたもんだなぁ…」
――あぁ、Yシャツに、学校指定ズボン。確かに異端。
「このにぃちゃんね、空から来たの」
「は?」
「そいでね、お外の国の、横浜から来たの」
「は?」
「でね、行くとこないからうちでかくまうの」
「は?」
「決定事項だから」
「…はぁ」
「ちょ、『はぁ』じゃないでしょお父さん!!弱すぎでしょ!!!」
「まぁ…慣れっこですわ」
「ダメだろ!!!」
「自分ちだと思ってゆっくりしてね」
「良いの!!?」
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