ANOTHER WIND~もう一人の主人公~
タスクは階段を駆け上がった。
食堂は一階で、教室は四階なので、教室に着く頃には多少息が上がっていた。
「おーい、翔!」
いるかいないかも確認せずに、呼んでみた。

さっきまでいた女子達が、全員おらず、教室はもぬけの殻となっていた。
よく考えると、階段や廊下でも誰ともすれ違わなかった。
別におかしくはない事だったのだが、なんとなく、奇妙な感を受けた。

「あ、タスク」
誰もいないと思っていた教室の、窓際の端っこの方から声が聴こえた。
びっくりして振り向くと、そこには彼がいた。
「あれ、なんだ、いたんだ。
 お前もっと早く反応しろよ」
「あ、ごめん」
「おいカケル、お前も早く食堂来いよ!」
「うん、すぐ行く…」

タスクが教室を後にした――瞬間。
タスクの身を“何か”が襲った。
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