紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています
彼の誘惑

 深夜、狭い車の車内でわたしは突然キスされた。

 強引なキスに最初わたしは呆然となった。

 相手は、わたしの職場の隣のテナントで働く緑川さん。

 恋人でもなんでもないけど、端正な容貌の持ち主の彼が相手なら、きっとたいていの女性は喜ぶに違いない。

 でもわたしは元々、この人が苦手で……何より急な展開に頭がついていけなくて、混乱するばかりだった。

とっさに彼を突っぱねようとしたが、広い胸に強く抱きすくめられていて、身動きがとれない。

 緑川さんの唇は、いつもの冷静沈着な態度が嘘のように熱かった。

 情熱的なキスにわたしは瞳を震わせながら、緑川さんの整った顔を見つめていた。

 彼は目を閉じ、わたしへのキスに集中している。わたしの内側にある劣情を暴こうとするような熱情が唇を通して伝わってくる。

 視界の端で車のハザードランプが点滅するたびに、わたしはこれは現実なんだとようやく認識できるようになった。

 わたしは目の前にいるこの人が……ずっとずっと苦手で……。


 それなのにどうしてこんなことになったのか、まずはそれを説明したいと思う。
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