紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています
そして…
一月三日は仕事始めの日だった。
朝早く出勤したわたしはカウンターの掃除を始めた。
レジを立ち上げて道具類の確認をしていく。
「あら、樫間さん、ご機嫌ね。何かあった?」
店長が出勤してきた。
わたしはびっくりした。どうやら幸せな気持ちが顔の外に出てしまっていたようだ。昨夜は、その、まあ、いろいろ激しかったので。寝不足で腰がだるいけど元気いっぱいだ。
「あけましておめでとうございます!」
新年一番のお客様は須藤さまだった。
「樫間さん、聞いてくださいよ。わたしクリスマスにプロポーズされたんです。彼がホテルの部屋を
予約してくれて、部屋でディナーを食べながら、ぼくと結婚してほしいって! もうめちゃくちゃときめきました。すごく幸せな一日でした」
「それはおめでとうございます」
「で、さっそく式場巡りしちゃって、挙式は六月の第三日曜日に決まったんですけど、やっぱりマリッジネイルは樫間さんにやってもらいたいと思っているので、よろしくお願いします!」
「わかりました」
「……あと、もし可能ならなんですけど、樫間さんに式に出席してもらうことはできませんか?」
「わたしですか?」
「樫間さんにはいろいろお世話になったから。是非にと思って」
結婚式は日曜日だ。そんな忙しいときに休めるのだろうかと考えていると店長が言った。
「行きたいなら行ってきなさい、樫間さん」
「え、いいんですか?」
「一日くらいなら問題ないわよ。須藤さまにはいつもお世話になってるしね」
わたしは須藤さまの方を向いて答えた。
「じゃあ、参加させていただきます」
「ありがとうございます。あ、わたし、明日から出勤なので、気合の入るようなネイルをお願いします」
「承知しました」
わたしはとびっきりの笑顔で答えた。
お昼休み、わたしはスマートフォンの手帳アプリにさっそく須藤さまの挙式の予定を入力しようと思い、そこで気がついた。――生理が遅れていることに。
「あれ?」
わたしの生理周期はわりと正確で、予定を過ぎたことなんてほとんどなかった。
わたしは昼食もそこそこに薬局までダッシュした。