紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています
マンションに帰宅すると、薫さんが先に帰っていた。
「今日は早いんですね」
「ええ。顔合わせ程度でしたから。それより晩御飯、ビーフシチューなんですが、いいですか?」
「はい。大好きです」
わたしは料理している薫さんに近づくと、後ろから抱きしめた。
「どうかしたんですか?」
「……わたし、できちゃったみたいです」
「え?」
「お昼休みに検査薬で調べたら陽性で、さっき、産婦人科に行ってきたら、七週目だと言われました」
一瞬、薫さんが動きを止めた。
「本当に?」
「本当です」
すると薫さんが満面の笑みを浮かべた。
「そうですか。これから大変ですが二人で頑張っていきましょう」
「はい」
薫さんはわたしをぎゅっと抱きしめ、唇にキスをした。
だけど、わたしは薫さんの笑顔が付き合う以前に見た、胡散臭い笑顔に似ている気がした。