紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています


 マンションに帰宅すると、薫さんが先に帰っていた。


「今日は早いんですね」

「ええ。顔合わせ程度でしたから。それより晩御飯、ビーフシチューなんですが、いいですか?」

「はい。大好きです」


 わたしは料理している薫さんに近づくと、後ろから抱きしめた。


「どうかしたんですか?」

「……わたし、できちゃったみたいです」
 
「え?」

「お昼休みに検査薬で調べたら陽性で、さっき、産婦人科に行ってきたら、七週目だと言われました」


 一瞬、薫さんが動きを止めた。


「本当に?」

「本当です」


 すると薫さんが満面の笑みを浮かべた。


「そうですか。これから大変ですが二人で頑張っていきましょう」

「はい」


 薫さんはわたしをぎゅっと抱きしめ、唇にキスをした。

 だけど、わたしは薫さんの笑顔が付き合う以前に見た、胡散臭い笑顔に似ている気がした。








< 115 / 119 >

この作品をシェア

pagetop