紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています
 
 六月の第三日曜日、わたしは須藤さまの式に出席した。わたしのお腹はだいぶ目立つようになっていた。ガーデンパーティーを椅子に座って眺めていると、ボーイが食べ物をよそって持ってきてくれた。お酒が飲めないのが残念だ。


「樫間さん、大変なときに来てくれてありがとうございます」


 須藤さまは幸せそうな笑みを浮かべていて輝いて見えた。そして爪をわたしの目の前に広げてみせた。


「このネイルも最高です」


 それは銀と白を散りばめた上品なマリッジネイルだった。


「お気に召していただけて何よりです」


 わたしと須藤さまは見つめ合うとそっと笑い合った。あとから須藤さまの旦那さんになった男性も

「妻がお世話になっています」と言って挨拶に来てくれた。須藤さまがお友達のところに行ったタイミングで旦那様がわたしに頭を下げた。

「明日菜との縁を結んでくれたのは、樫間さん……いや、副社長の奥様だと部長から伺いました。本当にありがとうございます」


 副社長とはもちろん薫さんのことだ。

 この場ではわたしが千海ホールディングスの後継ぎの妻であることは伏せられていた。


「わたしはたいしたことはしていません。すべて夫がお膳だてしたことですから」

「いや、奥様が妻によくしてくれた結果だと思っています」

「須藤さまを必ず幸せにしてくださいね」

「——はい。必ず」


 須藤さまの旦那さまは薫さんの言う通り、誠実そうな人だった。


 須藤さまの幸せな姿を見ることができて本当によかったと心から思った。








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