紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています
求婚
恋愛なんて何年ぶりだろうと、着替えながら思った。最後の彼氏と別れたのはもう三年以上前だ。とっくに記憶から消滅している。スマートフォンに母を筆頭に何人かの友達から誕生日を祝うメールが送られてきていた。
その日、緑川さんが案内してくれたのは麻布にあるフレンチのレストランだったので、もっとまとも
な服を着てくればよかったと後悔した。
「何を頼みますか?」
ワインリストを渡されても、どれがいいのかさっぱりわからない。
「緑川さんにお任せします」
「わかりました。最初はシャンパンで乾杯しましょう」
隠れ家のようなこじんまりとしたお店で、北欧風の家具が配置され、壁に暖色が使われているせいか、ほっとする空気が流れていた。緊張に強張っていた肩をほぐす。
「あの、聞いていいですか?」
「なんです?」
「どうしてわたしなんですか?」
「毎日、あなたを見ているのが面白かったからです」
わたしは呆れた。
「……それ、好きな相手に向けて言う言葉じゃありませんよ」
「これは失礼しました」
緑川さんはシャンパンを一口飲むと続けた。
「あなたはいつでも生き生きと楽しそうに働いていた。その姿を見ているのが楽しかったんですよ。ぼくはあなたが羨ましかった」
わたしはわけがわからなくなる。
「……緑川さんは好きで室善で働いているんじゃないんですか?」
「もちろん仕事は好きですけど、いずれ父の会社を継がないといけないんです。たいした会社ではないんですけど約束なので、いつまでも室善にはいられませんから」
シャンパングラスを揺らしながら、少しだけ寂しそうに緑川さんは言った。
その日、緑川さんが案内してくれたのは麻布にあるフレンチのレストランだったので、もっとまとも
な服を着てくればよかったと後悔した。
「何を頼みますか?」
ワインリストを渡されても、どれがいいのかさっぱりわからない。
「緑川さんにお任せします」
「わかりました。最初はシャンパンで乾杯しましょう」
隠れ家のようなこじんまりとしたお店で、北欧風の家具が配置され、壁に暖色が使われているせいか、ほっとする空気が流れていた。緊張に強張っていた肩をほぐす。
「あの、聞いていいですか?」
「なんです?」
「どうしてわたしなんですか?」
「毎日、あなたを見ているのが面白かったからです」
わたしは呆れた。
「……それ、好きな相手に向けて言う言葉じゃありませんよ」
「これは失礼しました」
緑川さんはシャンパンを一口飲むと続けた。
「あなたはいつでも生き生きと楽しそうに働いていた。その姿を見ているのが楽しかったんですよ。ぼくはあなたが羨ましかった」
わたしはわけがわからなくなる。
「……緑川さんは好きで室善で働いているんじゃないんですか?」
「もちろん仕事は好きですけど、いずれ父の会社を継がないといけないんです。たいした会社ではないんですけど約束なので、いつまでも室善にはいられませんから」
シャンパングラスを揺らしながら、少しだけ寂しそうに緑川さんは言った。