紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています
大学卒業後、父の会社に入れと命じられたけど、突っぱねて、祖父の愛した室善に就職した。父に対するささやかな反抗のつもりだった。そこで数年過ごすうちに、室善の隣のテナントにネイルサロンができ、しばらくして紫が就職した。樫間紫は天真爛漫で愛らしい女性だった。お客様を大切にするし、仕事に対しても一切手を抜かず熱心だった。惰性で室善で働いている自分とは大違いだった。そんな彼女だが薫と会話するときだけは、なぜかぎこちなくなった。挨拶ひとつにしても、追い詰められた動物の目をした。その顔があまりに愛らしくて、からかうために幾度か声をかけた。
「薫さん、何がおかしいのですか?」
室善クリスタルロード川崎店の店長を務める祖母がある日、珍しく店舗に来ていてそう訊いた。
「……なんでもありません」
紫のことを思い出して笑っている最中だったので、慌てて表情を引き締めた。
「薫さん、何がおかしいのですか?」
室善クリスタルロード川崎店の店長を務める祖母がある日、珍しく店舗に来ていてそう訊いた。
「……なんでもありません」
紫のことを思い出して笑っている最中だったので、慌てて表情を引き締めた。