紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています
十八時に仕事を終えてから、今度は実家の母に連絡を取った。非常階段の途中でスマートフォンを手に取り、お母さんの番号をタップした。
『紫、こんな時間にどうしたの?』
「あの……お母さん、実はわたし結婚することになったの」
『え? あらやだ、相手は誰なの?』
「緑川さん」
すると電話の向こうから鬼の首を取ったような声が聞こえてきた。
『やっぱりね。最初に会ったときから、あんたたち怪しいと思ってたのよ! それを付き合ってないなんて嘘をついて。まったくもう!』
このままではお母さんの緑川さんに対する心象が悪くなるとわたしは焦った。
「違うの、お母さん。プロポーズは前からされてたんだけど、結婚していいか迷うことがあったから、保留にしていただけなの。だから言い出せなかったの」
わたしは昼休みに緑川さんと打ち合わせをした台詞を必死でしゃべった。
お母さんは不安そうに訊いた。
『何? 結婚を迷う理由って』
「実は緑川さん、千海ホールディングスの後継ぎなの」
『ええ! そうなの⁉』
「わたしも実はそれを知ったのは最近で、だから緑川さんにふさわしくないってずっと悩んでたの」
『……そうだったの。そのこと緑川さんに言ったの?』
「うん。そうしたら、ふさわしいかふさわしくないかを決めるのは自分だからって言ってくれて。わたしがいいって……」
『そう。本当に紫のことを大切に思ってくれているのね』
電話越しにお母さんが感極まって涙ぐんでいることがわかった。
嘘をついている罪悪感にかすかに胸が痛んだ。
「それでお父さんの手術の前に一度挨拶に行きたいんだけどいいかな?」
『いつ来れるの?』
「明後日はどう?」
『ずいぶん急なのね』
急すぎるのはわかっていたけど、手術の前に結婚することを伝えてお父さんを安心させてあげたかったのだ。
「その日しか、お休みが合わなかったの」
『わかったわ。お父さんに話してみるから』
「うん。お願いね」
無事に通話を終えて、わたしはほっとした。
『紫、こんな時間にどうしたの?』
「あの……お母さん、実はわたし結婚することになったの」
『え? あらやだ、相手は誰なの?』
「緑川さん」
すると電話の向こうから鬼の首を取ったような声が聞こえてきた。
『やっぱりね。最初に会ったときから、あんたたち怪しいと思ってたのよ! それを付き合ってないなんて嘘をついて。まったくもう!』
このままではお母さんの緑川さんに対する心象が悪くなるとわたしは焦った。
「違うの、お母さん。プロポーズは前からされてたんだけど、結婚していいか迷うことがあったから、保留にしていただけなの。だから言い出せなかったの」
わたしは昼休みに緑川さんと打ち合わせをした台詞を必死でしゃべった。
お母さんは不安そうに訊いた。
『何? 結婚を迷う理由って』
「実は緑川さん、千海ホールディングスの後継ぎなの」
『ええ! そうなの⁉』
「わたしも実はそれを知ったのは最近で、だから緑川さんにふさわしくないってずっと悩んでたの」
『……そうだったの。そのこと緑川さんに言ったの?』
「うん。そうしたら、ふさわしいかふさわしくないかを決めるのは自分だからって言ってくれて。わたしがいいって……」
『そう。本当に紫のことを大切に思ってくれているのね』
電話越しにお母さんが感極まって涙ぐんでいることがわかった。
嘘をついている罪悪感にかすかに胸が痛んだ。
「それでお父さんの手術の前に一度挨拶に行きたいんだけどいいかな?」
『いつ来れるの?』
「明後日はどう?」
『ずいぶん急なのね』
急すぎるのはわかっていたけど、手術の前に結婚することを伝えてお父さんを安心させてあげたかったのだ。
「その日しか、お休みが合わなかったの」
『わかったわ。お父さんに話してみるから』
「うん。お願いね」
無事に通話を終えて、わたしはほっとした。