紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています
ネットで悪口を書かれてぞっとした。いったい何人の人がこれを見ているのだろうか。見えない目で監視されているようで肌があわだった。
「……このだら主婦って、須藤さまじゃないですか?」
「え?」
小沢さんの言葉にわたしはぎょっとした。たしかに須藤さまは今わたしに対して好意的とは言えない感情を持っているけど、こんな書き込みをする人ではないはずだ。そう思いたかった。店長が言っ
た。
「まあ、今のところ関係者が読めば嘘ってわかる内容程度にとどまっているからいいけど……」
見えない悪意にさらされ、呆然とするわたしを、店長と小沢さんが優しく諭す。
「こんなもの、わざわざ観る人なんて限られたごく少数だよ。気にしないで」
そう言われたものの、わたしの気持ちはすっかり落ち込んでしまった。この書き込みの主が本当に須藤さまならば、彼女がこんな真似をするほど傷つけてしまったのだと思うとやるせなかった。
けれど、しばらくは結婚式場を決めたり、招待客を決めたりするので忙しくて、サイトの書き込みに悩む時間は減った。それでもふとした瞬間に、誰かに見られているように思えてそわそわと落ち着かない気持ちを味わった。
「紫さん、どうかしたんですか?」
「え?」
わたしは式場での打ち合わせの帰りに、薫さんとご飯を食べていた。薫さんが好きな創作フレンチのお店で、食事をしている最中に人の目が気になってしまっていて、不審に思われたのだ。
「なんでもないです」
「嘘をついても無駄です。あなたはすぐに顔に出るから嫌でもわかりますよ。それで、何があったんですか?」
ため息をついたわたしは何もかも正直に薫さんに打ち明けた。
「……違うとは思うんですけど、もしも小沢さんが言うように須藤さまだとしたらと思うと……」
わたしを悩ませるサイトを見た薫さんは力強く頷いた。
「わかりました。あなたの言う通り、その須藤さんという人の可能性は低いと思いますが、こちらで調べてみます」
嫌に確信を持って言うのが気になったけれど、わたしは真実が知りたくて、薫さんに任せることにした。
しかし、三日後、事態は急変した。