宵闇の光
二人で報告に来た場合、実際に話すのはラグニードが主で、今もそうしている。彼の方が話をまとめるのは得意であると同時に、長い付き合いで大抵の場合、見解が一致しているのを承知済みだからだ。
もちろん聞かれれば意見は言うが、アディが自分から口を挟むのは、個人的に気づいたことがある時ぐらいである。
「……だったんで、その二人に絞れると思うんですけど」
「二人か。──あの、従兄弟同士とか言ってた奴らはどこに問題があった?」
「それは」
ラグニードが言葉を切り、こちらを横目で見た。ボロムも質問の時点からアディの方に視線を移している。
息を一つ吸い込み、アディは口を開いた。
「あいつらは、もう何人も殺してます。故郷で」
聞かされた二人が、軽く目を見張った。
「理由までは分かりませんが、ともかく、自分たち以外の家族を全員殺してきている──その経験がきっかけになって、とにかく人を殺せる機会を奴らは探していた。そのために、ここに来たんです」
聞いているのが他の仲間だったら、何を根拠にそこまで強く言い切るのかと、逆に疑問を持ったかも知れない。しかし今この場にいる二人には、一瞬も訝しんだ様子はなかった。
しばしの沈黙の後。
「そうか」
静かに、何気ない口調でボロムが言った。表情も先程までと一見変わりはないが、見慣れた者なら、わずかに険しくなっているのに気づいただろう。
「追われているのか、奴らは」
「そこまでは……けれど、おそらくは」
「だろうな。故郷がどこかは分かったか」
「確か、ベルガナの──」
山脈を挟んだ隣国の、田舎町の名をアディは口にする。その名前にラグニードが反応した。
「そのあたりなら、うちの連中が詰めてる町も近いんじゃなかったか? ですよね、親父さん」
親父さんと呼びかけられたボロムは、頷きで確認の言葉を肯定する。
「噂が伝わってるかも知れませんから、連中から向こうの自警団と繋ぎを取ってもらえば」
「いや、それだと時間がかかっちまう。奴らをあまり長く留めておくわけには──口実を設けて連れて行く方が早い」
「俺が行きます」
アディの発言に、再び他の二人が振り向く。
今度の沈黙はやや長かった。
「……一人でか」
「その方が怪しまれないでしょう」
迷いなく言い切る。訓練責任者の立場は飾りではなく、実力は集団内の上から三名の中と認められている。油断さえしなければ、たとえ二人がかりで襲われたとしても、充分に対処できる自信はあった。