悪役令嬢の涙。好きな人を守るのためならば、私は悪役でも構いません。
断罪の幕が開けた
断罪の幕が開けた
「もうこれ以上、君の悪行には付き合っていられない。もううんざりだ、ティア」
ああ、ここまで来るのに、本当に長かった。
あなたとの婚約破棄を手に入れるために、私は……。
やや冷たくなった秋の風が髪を揺らした。
熱く、そして痛む胸が、この風によってほんの少しだけ落ち着く気がする。
私は断罪に泣きそうになるのを、ぐっと堪えた。
そう、これは私が望んだこと。
そして私が仕向けたことだ。だから最後まで、悪役令嬢という役をやり切らなければいけない。
「君がした、リーリエへの数々の嫌がらせ。もう隠し通せるものではないんだぞ」
「カイル様……」
私は誰よりも好きで好きで仕方のない、婚約者の名を呼ぶ。
彼の横には親友だったリーリエがいた。
長いハニーブロンドの髪に、青い瞳、薄紅色の唇。細い腕をカイルに絡ませ、瞳には涙を貯めている。
その細くか弱いリーリエにしなだれかかられれば、落ちない者などどこにいるだろうか。
女の私から見ても、彼女は完璧な令嬢であり、なにより美しい。
「リーリエがいけませんのよ。私の、カイル様に近づくから」
それに比べて私はどうなのだろう。同じ侯爵令嬢であるにも関わらす、私はリーリエとは全く違う。
髪もややグレーがかった水色の髪に、青い瞳、そして少し日に焼けてしまった肌。
本来ならば学園であっても侍女を連れて来ることが出来る。身の回りの世話をさせるためだ。
しかし私にはそれはいない。身の回りの世話は全て、平民の子たちと同じで自分でしなければいけない。
そのために髪にはあまり艶はなく、手もリーリエのような白魚の手とは無縁だ。
でも別にだからといって、この生活が気に食わないわけではない。むしろ、誰にも気を遣わなくてもいい。
それは居場所のない私にとって、なにより有り難かったから。
ああ、ここまで来るのに、本当に長かった。
あなたとの婚約破棄を手に入れるために、私は……。
やや冷たくなった秋の風が髪を揺らした。
熱く、そして痛む胸が、この風によってほんの少しだけ落ち着く気がする。
私は断罪に泣きそうになるのを、ぐっと堪えた。
そう、これは私が望んだこと。
そして私が仕向けたことだ。だから最後まで、悪役令嬢という役をやり切らなければいけない。
「君がした、リーリエへの数々の嫌がらせ。もう隠し通せるものではないんだぞ」
「カイル様……」
私は誰よりも好きで好きで仕方のない、婚約者の名を呼ぶ。
彼の横には親友だったリーリエがいた。
長いハニーブロンドの髪に、青い瞳、薄紅色の唇。細い腕をカイルに絡ませ、瞳には涙を貯めている。
その細くか弱いリーリエにしなだれかかられれば、落ちない者などどこにいるだろうか。
女の私から見ても、彼女は完璧な令嬢であり、なにより美しい。
「リーリエがいけませんのよ。私の、カイル様に近づくから」
それに比べて私はどうなのだろう。同じ侯爵令嬢であるにも関わらす、私はリーリエとは全く違う。
髪もややグレーがかった水色の髪に、青い瞳、そして少し日に焼けてしまった肌。
本来ならば学園であっても侍女を連れて来ることが出来る。身の回りの世話をさせるためだ。
しかし私にはそれはいない。身の回りの世話は全て、平民の子たちと同じで自分でしなければいけない。
そのために髪にはあまり艶はなく、手もリーリエのような白魚の手とは無縁だ。
でも別にだからといって、この生活が気に食わないわけではない。むしろ、誰にも気を遣わなくてもいい。
それは居場所のない私にとって、なにより有り難かったから。
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