2人なら…「推しと彼氏と彼女の関係」
スゥの側で、膝から崩れるリュウ。
私はリュウの側にしゃがみ込む。
ハサミを持たなければいけない右手の甲にじわりと血が滲んでいる。
その手をそっと握り締める。
「ハル…。朱雀の所へ行って…。
そういうのを運命って言うんだ。」
リュウはそう言って、愛おしむような目で私を見てうなづいた。
幸せにする資格って…何?
運命って…何?
スゥは明らかに苛立っているのが分かる大きな咳払いを一つ。
「なぁ…ハル。そういうのを例えば本当に運命だとすると……。
あの話、親父…なんて言ったと思う。」
私はハッとして我に還る。
そして…恐る恐るスゥの横顔を覗き込んだ。
「知りたい?」
息が苦しい。
スゥのお父さんとママの関係。
やっぱり、スゥはそれを確かめに富山へ来ていたんだ。
「…………。」
返事を返せないでいると、スゥは項垂れるようにして身体を起こした。
「知りたい?」
私を見る大きな黒目。
念を押すスゥの瞳には涙はもうなくて、グッと飲み込まれそうな黒目には怯える私が写っていた。
「そうかもしれないし。そうじゃないかもしれない…って……。」
酷い…
酷い答えだ。
運命って…何?
「最低…だよ。最低な父親だよ。」
私は…ただ…
ただ2人のことが好きなんだ。
どんな答えを聞いたとしても…どんな運命があったとしても…
私の気持ちは私でしかない。
リュウがリュウであるように…
スゥとたとえ血が繋がっていても…
私は2人が好きだよ。
リュウとスゥが好き。
運命ってなんなんだろう。