2人なら…「推しと彼氏と彼女の関係」
談笑しながらお客さんの髪をすくリュウ。

私はバックヤードからその様子を見つめながら、スゥとの通話を切った。

リュウの右手には包帯が巻かれている。

この間の…傷。

スゥの頰にも、薄らと打撲の跡ができていた。


「ハーールさんっ♪ 今晩、〝どん兵衛〟寄って行きません?」

相変わらずテンション高めの心ちゃんに両肩を掴まれて首を縮める私。

あの日からの変化を強いて言うなら…
悪いことをしている訳でもないのに、些細なことにビクついている自分がいる。

秘密の共有とはそういうものなのかもしれない。

「そんなに驚かないで下さいよぉ〜。」

「ははっ…ごめんごめん。(苦笑)電話に気を取られてたから…。」

「えっ!何か…緊急ですか?」

「あぁ〜全然。全然。弟から。大した用じゃなくて…」

「朱雀君ですかっ!!呼んで下さいよっ。どん兵衛っ!」

「あぁ〜それが…ほら、今、収録の合宿中だし…。」
 
「あっ…そっか。残念…。てか、ハルさんどん兵衛?行けます?」

「どん兵衛はいいけど…未成年のお酒は…ちょっと…」

「ジャーーン!20歳になりましたぁ!この前のことは、ちょっとしたフライングですって。気にしないで下さいっ(笑)」

「えっ!そうなのっ。じゃあお祝いしなきゃっ。」

「(笑)嬉しいんですけど、それより今日は大人の言葉を借りるなら…呑みたい気分なんですっ!!」

「どうしたの?(笑)」

私は半分冗談のつもりで軽く聞き返した。
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