2人なら…「推しと彼氏と彼女の関係」

scene No.4

…共有か略奪か…
scene No.4
〈ヘアーサロン リンドフィールド〉

「流青、ちょっといい…コンテストのことでスタッフから、電話……」
オーナーがバックヤードからリュウを呼ぶ。

「あっ…はい、今行きます!」
リュウはアリスさんの前髪を少し整えると、後はよろしく…と私に目配せをした。

「すみません、アリスさん。失礼しますね。」
「あぁ〜んっ!滝沢君!!」
アリスさんは、バックヤードに向かうリュウの背中に両頬を膨らませた。

「ありがとうございました。ケープ、外しますね。」
私は少し緊張した面持ちでアリスさんに声をかけた。

アリスさんは軽くうなづくと、
「この間はごめんなさい…あの日、仕事でむしゃくしゃしてて…」と髪を掻き上げた。
鏡越しのアリスさんにドキドキする。

あの日…とは、お店を出たところで平手打ちされた日のことだろう。

「人を叩くなんて…どうかしてたと思う。」
アリスさんの声のトーンはとても大人だったが幾分か棘を感じる。

「いいえ…あの…大丈夫です。どうか忘れて下さい。」

顔中が熱くなる私に、アリスさんがたたみ掛ける。
「2人のあんな姿…見たくなかった。
…て、いうか…私、滝沢君が好き。
あの時、確信した。」

「あの日のことは…どうか忘れて…下さい。」

「それは…どっちの意味っ⁈」
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