2人なら…「推しと彼氏と彼女の関係」
私はリュウの方へ向き直る。

リュウは私を抱きしめたまま…唇を合わせる。

今日はやたらと手元のニンニクが匂う。
リュウの襟元の甘い香りが消されてしまう程…。

「……次、これ?唐辛子…切ればいい?」

リュウは少し照れた顔をするとそう言って私の隣に立った。

「あっ!…いいよ、リュウはっ。ケガしてるし…」

「てか…もう全然平気。笑」

リュウは包帯を外して手の甲を私に見せて笑った。

私は唐辛子をリュウに任せてトイレの個室に入る。

ニンニクの香りからの解放……

嫌いじゃないはずの香りなのに……

まだリュウとのキスに余韻が残る唇に触れながら、ふっと思う。

毎回不定期だから、忘れてたけど…いつからきてないっけ…? 生理。

思い出せない。

ここ最近、忙しかったからなぁ…。

解放されたはずのニンニクの香りが胸にムカムカと込み上げてきた。

しばらくトイレの個室にこもる私。

そのうちにオリーブオイルにニンニクが炒められていく良い香りがする。

しばらくしてフライパンがゆすられる美味しい匂いが扉の隙間から流れ込む。

リュウが手際良くペペロンチーノを仕上げている姿が想像できた。

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