魔術師と下僕
丸いところ、細長いところ、ぎざぎざのところ……と、注意深くたんぽぽの輪郭を目でなぞっていく。
背中に太陽の光が当たって暑い。
目の前にある通りに書いているつもりなのに、なかなか思うようにはいかない。出来上がったタンポポはいびつで、イリヤは破り捨てたいような気持ちになった。
クレヨンで塗りつぶしてしまおうかーーそう考えたとき、後ろにジオが立っていた。
「最初からそんなに上手く描けるわけないよ。僕じゃあるまいし」
まるで自分は最初から上手かったかのような口調だ。
ジオは片腕にこの草原の一体どこから持ってきたのかというような、毒々しい色や奇怪な形の植物を抱えていて、危ない人にしか見えない。
集めた草を束ねて置き、貸してごらんとイリヤの手からスケッチブックを取る。そして出来た絵は、地獄で見たのかと問いたくなるような、赤紫色の禍々しい花だ。
「うん、天才」
禍々しい花を見て満足げに頷くジオに、イリヤはなんと言うか、反応に困る。そして、これは自分のタンポポの方がマシかもしれない……と、若干嫌な自信をつけてしまった。