魔術師と下僕
しばらく真剣に描き続けていると、ジオが呼びにきた。
「そろそろおしまい。向こうに僕がわざわざ早起きして作ったサンドイッチがあるから、片付けて来な」
赤と白のチェック柄の可愛らしいレジャーシートは、つんと澄ましたジオが座っているとどうもアンバランスな感じがする。
隣に腰掛けると、ジオはたまごがあふれそうなサンドイッチをイリヤに押し付けた。
「よく噛んで慌てずに食べて。あと、これがお前のぶんのお茶」
と、ジオはてきぱきと世話を焼く。
一緒に食事をするのは未だに緊張するが、原っぱは居心地が良く、サンドイッチはおいしい。
数日暮らす中で、最初に感じた恐怖がはっきりと薄れていることを、イリヤは感じていた。主人の言動は率直に言ってよくわからないが、あの老婆が言っていた「根はいい子」の意味が、少し分かってきた気がする。
野菜サンド、ハムサンドを食べろ食べろと押しつけられるままに食べているうち、イリヤは眠くなってきた。
すると、ジオの方が先に寝ていることに気がつく。
起きている間はいつも眉間に皺が寄っているジオの顔は、眠るとすっかり弛緩して少年のようだ。
イリヤははっとして、スケッチブックとクレヨンを手に取った。