魔術師と下僕
外は晴れていて、地面は少し湿っている。
イリヤは早くもひとりで脳内反省会を繰り広げていた。
下僕という言葉の力もありながら、昔の自分はもっと、わざわざ自分なんかの世話を焼いてくれるジオに迷惑をかけることは極力するまいと、緊張感を持って日々を送っていたように思う。
どうやらこれは恋心だぞと自覚をした後も、結ばれるなどという図々しい考えは極力ベッドの中での妄想にとどめて、彼の負担にならないことを第一に考えて行動しようとしていた。
ところが今となってはどうだろう。
口ごたえをし、一方的に好意を押しつけ、目の前で涙するなど、自分でも信じられないくらい自分勝手になってしまっている。
なんだか落ち着かないような気持ちになり、イリヤは庭で何度かジャンプをした。
きっとジオは呆れているだろう。というより、イリヤの好意自体とっくに気づいていて、気づいていないふりをしていた可能性だってある。感情が顔に出やすいタイプだという自覚が、彼女にはあった。
どんな顔をして帰ればいいのかイリヤにはわからない。その前に、ジオを頼れない今、どうやって人の姿に戻ろうかという問題もある。さっき、勢いでカエルになった自分を見るジオの目は悲しかった。