魔術師と下僕
「ふーん気がきくじゃん」
ジオが缶コーラを開けようとするのをレンブラントはしめしめと思いながら眺めている。当たり前だが、そのコーラは全力で振ってある。
プシュ!と音が鳴った瞬間にレンブラントは全身コーラまみれになった。
「は!? きたな! なんで??」
汚れ防止結界の内側で、お前の考えることなんかお見通しだ、とジオは極めて意地の悪い顔をした。結界はコーラを跳ね返し、周辺をびちゃびちゃにした。この結界はカレーうどんを食べる時などに重宝する。
「最悪。蟻がたかったらお前のせいだから」
そう言いながらもジオは薄ら笑いを浮かべている。
「生憎近所に風呂屋がないんだよね。水をかけてやってもいいんだけど」
するとジオは右の手のひらの上に、テニスボールくらいの水の球体を作った。
「クソっ、相変わらず年下のくせに可愛くねえな!」
レンブラントはぶるぶると頭を振ってコーラをはじく。風呂上がりの犬みたいだ。
「三十路越えたら年下とかほぼ関係ないから」
「三十路だからなんだコラァ!」
甘い匂いをさせながらオラつき出したレンブラントに、イリヤが「あの……」と声をかける。それを見たジオの顔から表情が消えた。