魔術師と下僕
「イリヤ。どういうことか説明して欲しいんだけど」
「何がですか?」
イリヤはジオが何を言わんとしているか察したものの、わざと知らないふりをすることにした。
「まさか、よりにもよってこいつとしたんじゃないだろうね」
ジオは蒼い顔をしてコーラまみれのレンブラントを指差す。要するに、レンブラントとキスをしてカエルから人間に戻ったのではないか、と早合点をしているのだった。
事情のわからないレンブラントはどうやらまた悪口を言われているという点は理解して、「オレがなんだっつんだよ」と茶色い汁を飛ばしながらぷりぷりした。
別件でぷりぷりしているイリヤはというと、「それはどうでしょうね」とわざと曖昧な返事をした。そして、少し意地悪な気持ちで「どちらにしてもジオには関係ありませんよね?」と言った。ジオの顔はもはや蒼を通り越して白くなっている。
「……冗談でしょう」
「わたしが冗談を言っているように見えますか?」
ジオには返す言葉もない。ただむっ、と口をつぐんでいることしか出来なかった。とにかくものすごくショックだったのである。仕方なく、「レンブラント。……一発だけ殴る」と拳を固めた。
突然暴力を振るうと宣言されたレンブラントは「は? なんでだよ、頭おかしいんじゃねえの」と悪態をつきながらしかし、ジオが今までになく恐ろしい形相になっているのでさりげなく一歩後退する。