魔術師と下僕

 一方イリヤは、まだ迷っていた。

 やりたいことはある。けれどそれは魔術とは別のこと。そちらに進みたい気持ちはあったが、魔術学校を離れればジオとの関わりは必然的に減ることになる。そんなのはさみしい。

 イリヤは先日の進路希望調査票に、「ジオルタ先生の奥さん」と書くというベタなことをやって、ベタに指導を食らった。
 
 校長から真面目に考えろと言われたイリヤは、たしかに、と思った。半ば当てつけのような気持ちでしたことだからである。ジオがそれを読んだのかどうかは知らない。彼の態度は相変わらず素っ気なかったから。
 
 再提出を命じられた調査票には「未定」と書き、まあ前よりはマシになった、と受理された。


「みんなでここにいられないのはさみしいけど」と、ヒルデ。「もしも他のことをするなら、あの野郎からがっつり学費ぶん取ってやるんだよ」


 あまりの言いぐさに、イリヤは思わず笑ってしまった。
< 129 / 168 >

この作品をシェア

pagetop