魔術師と下僕

 タミヤの墓は、ひろびろとした土地に建っていた。風に髪を乱されながら、二人は墓石に歩み寄る。

 歴代のタミヤがどんな人だったかはわからないが、ずいぶん立派なお墓なんだな、とイリヤは思う。裏側に書いてあるすごい数の名前は、多分タミヤを名乗っていた人たちの本当の名前なのだろう。

 花を供えると、二人は並んで祈りを捧げた。ジオの方が少しだけ長かった。自分の師匠と関係のある人たちだから、その分思い入れもあるのだなとイリヤは理解する。


「ジオはどんな子だったんですか?」


 レンブラントから伝え聞いている部分もあるが、ジオの口から聞いてみたかった。


「嫌なガキ」


 ジオは即答した。え、とイリヤは反応に困る。


「少なくともイリヤみたいな優しくてかわいい子ではなかったよ」


 イリヤは「かわいい」の部分で一瞬ぎょっとしたが、すぐにそれが一般的な子供に対する言葉だと気づいて、ひそかに落胆した。


「そうですか……」


 アルバムを見た限りではたしかに表情は鋭かったけれど、ジオだってかわいかったのにな、とイリヤは思う。それを伝えたらジオは否定するだろうけれど。
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