魔術師と下僕
彼女の失踪
ーージオ。
イリヤの声が聞こえた気がして、ジオルタはすごい勢いで振り向いた。
質問をしようと話しかけた生徒は、驚いて肩を竦める。
「す、すみません」
「忙しかったら後にします!」
二人の女生徒は、このところますます鋭くなったジオルタの顔つきに怯えて後ずさる。
「……いや、僕の方こそすまない」
ジオルタは彼女たちがどうしてもうまくできないという術を見てやったが、彼女たちはジオルタの鬼気迫る様子に緊張しきっており、こんなことでは成功するものも成功しない。
あとは自分たちでやってみます、と二人はそそくさと教室を後にした。
「やいジオルタ!」
そこへずけずけと話しかけてきたのはなんだかよくわからないが全身汚れているレンブラントだ。
「お前……」
レンブラントはジオルタの顔を無遠慮に見つめると、「なんか老けたな!」とゲラゲラ笑った。
「……別に」
ジオルタの返事に、レンブラントはやれやれこれはほんとうにおかしくなってしまった、張り合いのないことだーーというような意味のため息をついた。
一方、レンブラントの突撃を廊下からはらはらしながら見守っていたナターリアたち実習班の面々は、マジあの人気遣い出来なさすぎる、大人としてやばい、というような意味のため息をついた。