魔術師と下僕
「イリヤ?」
イリヤは出て行こうか出て行くまいか、様子を伺った。
ベッドやその下を探してもいないので、ジオはなにやら様子がおかしいことに気がついたようだった。
「まさか出て行ったのか?」
それを聞いたイリヤははっとした。出て行こうなどと考えるはずもない。ほかに行く場所などないのだ。
なんとかそれを伝えなくてはならないと思い、イリヤは思い切ってジオの足めがけて飛びかかった。
「わっ」
ジオは驚いて声を上げ、足元を見る。
そして、カエルーーイリヤと目が合う。
その瞬間。
「うわぁあぁぁぁあああぁぁぁあ!!!!!!」
と、ものすごい叫び声を上げて飛び退った。
「おい、どこから入って来たんだよ!? カエル避けのまじないが切れたのか!!??」
反応からして間違いない。ジオはカエルが大の苦手なのだ。
事情を説明したイリヤがぴょんっと一歩近づいただけで、「いやだ! 来るな!」と壁に背中を押しつけている。
とても話を聞いてくれそうな状態にないし、そもそも自分は話せない。どうしたらいいのだろう……。そう思ったとき、イリヤの体が宙に浮いた。