魔術師と下僕
【手】がやって来る回数は日に日に増えていき、試行錯誤をして追い払ううちに、皮肉にもジオの魔術の腕はかなりのスピードで上達していった。
とても古い辞典のなかに、罪人を捕まえる【手】の記述があった。ということは自分は罪人を庇っていることになる。しかし。
「寝癖ついてますよ」
「あ、ほんとだ」
こんなぼんやりしたどこまでも善良そうな女性がなんの罪を犯すものかとジオは疑問に思う。それに、もし罪人だとしたら回りくどいことはせず誰かが捕まえにくるだろう。
そしてもう一つ。これは別の本にあった、【迎えの手】。誰かが【マリア】を迎えに来ているということだ。もしかするとそれは、彼女がここに滞在している理由と関係があるのかもしれない。
「マリアさん」
「ん? 寝癖なおってない?」
ジオはそうじゃないです、と笑った。