魔術師と下僕

 その人、がどんな人なのか。ジオは訊くのが辛いような気がして、訊けなかった。


「ーー分かりました」


 そしてジオは、【手】について話した。【マリア】はこれまでになく真剣な表情で話を聞いていた。


「それについて行けば、わたしは帰れるってこと?」
「確証はありませんし、行った先で危険な目に遭わないとも限りません。けど」
「そうだね。ずっとここにはいられない」


 ずっとここにはいられない。
 【マリア】の言葉に、ジオは息を呑んだ。そしてそんな風にショックを受けていることに驚きもした。
 ジオはいつの間にか、彼女との暮らしが続くことを望んでいた。自分でもよくわからないうちに。


「ジオ君」


【マリア】に呼ばれて、顔を上げる。


「わたし、ここに来られて良かったよ。助けてくれてありがとう」

「……いえ」胸がつかえるような感覚に、ジオは眉を顰めた。「次に【手】が現れたら、その時に」


【マリア】はうん、と頷いて、笑った。
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